モグラは益獣か害獣か?― 農家を悩ませる「複雑な隣人」の正体

農業の現場において、モグラは非常に「評価が真っ二つに分かれる、複雑な隣人」と言えます。

一言で言えば、「土作りには貢献してくれるが、作物には実害を及ぼす困ったちゃん」です。 農家さんの視点から、その功罪を整理して解説します。


モグラ

1. 「益獣」としての側面(土壌の味方)

モグラは肉食であり、植物の根を直接食べることはありません。 そのため、見逃せないプラスの効果も持ち合わせています。

  • 害虫ハンター: 根を食い荒らすコガネムシの幼虫(ジムシ)や、ヨトウムシなどを大量に捕食します。
  • 土壌の耕耘(こううん): 地中を掘り進むことで土に空気が入り、通気性・排水性の向上に寄与します。
  • ミミズの存在証明: モグラがいる場所は餌となるミミズが豊富で、有機物が多い「良い土壌」の指標にもなります。

2. 「害獣」としての側面(栽培の敵)

一方で、農家さんが頭を抱える理由は、彼らが掘り進める「トンネル」にあります。

  • 根を浮かせてしまう: 作物の直下を掘られると根が土から離れ、「根浮き」状態になり、 水分や養分を吸えず枯死する原因になります。
  • ネズミの通路になる: 最も厄介な問題です。モグラのトンネルを野ネズミが利用し、 サツマイモやジャガイモなどの根菜類を食害します。 「モグラに食べられた」と思われがちですが、犯人はネズミであることがほとんどです。
  • 水管理の崩壊: 田んぼの畔(あぜ)に穴を開けられると、水が漏れ出し、水位管理が困難になります。

農業現場での立ち位置まとめ

特徴 農家さんへの影響
食事 害虫を食べてくれるためプラス
移動(穴掘り) 根を傷め、ネズミを招くためマイナス
結論 家庭菜園や畑では「追い出したい対象」であることが多い

補足:どう対処しているの?

モグラは嗅覚が非常に鋭いため、風車で振動を与えたり、 忌避剤(ニオイの強いもの)を使って 「ここは居心地が悪いよ」と知らせる方法が一般的です。

ちなみにモグラは「12時間食べないと餓死する」と言われるほど代謝が激しい生き物です。 捕獲して別の場所に逃がしても、餌が乏しければ生き残れないという過酷な一面もあります。

農業の現場では、彼らの「働き」を認めつつも、 作物を守るために絶妙な距離感で(あるいは必死に) 追い出し工作が続けられている――それがリアルな実情です。